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はじめに
空き瓶の飲み口に息を吹きかけると、「ボーーッ」という音が鳴るかと思います。この現象をヘルムホルツ共鳴と呼びます。今回は、そのヘルムホルツ共鳴のメカニズムについて解説していきます。
ヘルムホルツ共鳴によって鳴る「ボーーッ」という音の周波数(共鳴周波数)は次のようにあらわすことができます。
この表式を導いてみましょう。
音が鳴る仕組み
ヘルムホルツ共鳴がおこる仕組みは比較的単純で、以下のようになっています。
① ビンの飲み口に息を吹きかけると、ネック部分の空気がボトルにおしこまれる。
② ボトル内の圧力が上昇し、空気を押し返す。
① ⇄ ② の繰り返しによって空気が振動し、音が鳴る。
(☆)を導くために、まずはネック部分の空気を質量 $m$ のピストンとみなしましょう。ネック部分の断面積、長さをそれぞれ $S, L$ とし、空気の密度を $\rho$ とすれば
m \approx \rho S L
\end{eqnarray}
と近似的に表すことができます。
さて、ピストンに力がかかっていない状況では、内部の気体の圧力は外気圧と等しく $P_0$ であり、その体積は $V_0$ です。
今、ピストンを $x$ だけ押し込んで、圧力が $P$ 、体積が $V$ と変化したとすると、ピストンには
F = -S(P – P_0)
\end{eqnarray}
の復元力がかかります。また、ピストンの押し込みによる気体の膨張、圧縮は断熱操作であると仮定しましょう。すると、ポアソンの関係式から
PV^{\gamma} = P_0V_0^{\gamma}
\end{eqnarray}
が成り立ちます。ここで、$\gamma$ は比熱比です。また、
V = V_0 – Sx
\end{eqnarray}
が成り立ちますから、(4)を(3)に代入して、
&P&(V_0 – Sx)^{\gamma} = P_0V_0^{\gamma} \\
\\
\therefore\ &P& = P_0V_0^{\gamma} \cdot (V_0 – Sx)^{-\gamma} \\
&&= P_0V_0^{\gamma} \cdot V_0^{-\gamma} \left(1 – \frac{Sx}{V_0}\right)^{-\gamma} \\
&&= P_0 \left(1 – \frac{Sx}{V_0}\right)^{-\gamma} \\
\end{eqnarray*}
を得ます。
ここで、$\frac{Sx}{V_0}$ は微少量であることを考えると、$|\varepsilon| \ll 1$の時に成り立つ関係式: $(1 + \varepsilon)^{\alpha} \approx 1 + \alpha\varepsilon$ を用いて
\begin{split}
P &=& P_0 \left(1 – \frac{Sx}{V_0}\right)^{-\gamma} \\
&\approx& P_0 \left(1 + \gamma \frac{Sx}{V_0}\right)
\end{split}
\end{eqnarray}
と表すことができます。よって、(5)を(2)に代入すれば
F &=& -S\left\{ P_0 \left(1 + \gamma \frac{Sx}{V_0}\right) – P_0\right\} \\
&=& – \gamma \frac{P_0S^2}{V_0} \cdot x
\end{eqnarray*}
となります。
したがって、質量 $m$ のネック部分の空気が従う運動方程式は
m \frac{\mathrm{d^2}x}{\mathrm{d}t^2} =\, – \gamma \frac{P_0S^2}{V_0} \cdot x
\end{eqnarray*}
となり、バネ定数 $k = \gamma\frac{P_0S^2}{V_0}$ の単振動と見なすことができます。
よって、空気の振動数、すなわち共鳴周波数 $f_{\rm H}$ は
f_{\rm H} &=& \frac{1}{2\pi} \sqrt{\frac{k}{m}} \\
&=& \frac{1}{2\pi} \sqrt{\frac{\gamma P_0S^2}{mV_0}}
\end{eqnarray*}
と計算できます。
上式に、(1): $m \approx \rho S L$ と、音速 $v$ の関係式: $v = \sqrt{\frac{\gamma P_0}{\rho}}$ を代入すれば、
f_{\rm H} = \frac{v}{2\mathrm{\pi}}\sqrt{\frac{S}{V_0 L}}
\end{eqnarray*}
を導くことができました。